この記事は投資に関する内容が含まれています。
ここではあくまでも私的な考えを紹介させていただいており、投資は自己判断でお願いします。
・シンバイオ製薬とは
・キメリックス社(Chimerix, Inc.)とは
・キメリックス社のFDA承認ニュースがシンバイオ製薬に与える影響とは
今回の記事では、シンバイオ社関連のお話です。
キメリックス社がブリンシドフォビルについて、天然痘の医療用目的とした利用としてFDA承認を受けました。
これは、シンバイオにとって直接売り上げにつながる内容ではありませんが、将来的に大きな意味を持つ内容であると考えられます。
今回のニュースで、シンバイオ製薬にとって重要なことは、「FDAがブリンシドフォビルをヒトに対する薬として認めた」というところにあります。
この記事では、上記の点について説明します。
<シンバイオ製薬とは>
シンバイオ製薬とは、製薬会社であり、未だ満たされていない医療ニーズを対象として医薬品の開発を進めています。
主に取り扱っているのはトレアキシンという血液がんを対象とした薬です。
開発品の一つに、今回の投稿で紹介する抗ウイルス薬であるブリンシドフォビル(brincidofovir)があります。この薬についてはのちに紹介します。
<キメリックス社(Chimerix, Inc.)とは>
キメリックス社とは、先ほど紹介したブリンシドフォビルを開発したアメリカの会社です。
現在有効な治療法がないウイルス性疾患(AdV, BKV, EBV, HHV-6等)に対する薬剤としてブリンシドフォビルを開発していましたが、がん領域を中心とする事業に集中するため、天然痘を除くすべてのグローバルライセンスをシンバイオ製薬に導出しました。
<なぜ天然痘はキメリックス社の権利としているのか>
「天然痘以外のライセンスを導出した」となると、キメリックス社が必要な部分を保持して、いらないものを買わされたのではないかと不審に思う方もいるかもしれません。
しかし、キメリックス社が天然痘の権利を維持したのには理由があります。
それは、アメリカの国家戦略が絡んでいるからです。
天然痘はすでに撲滅しており、自然界には存在しないとされています。そのウイルス株を持っている国があり、バイオテロの対策として治療薬を必要としています。
キメリックス社は、アメリカの国家戦略備蓄プログラム(BARDA)により、天然痘の適応症に対するブリンシドフォビルの開発を目的として、1億ドルを超す資金を受けています。
上記の理由から、天然痘に関してはキメリックス社で開発をする必要があったと思われます。
上記でも説明した通り、天然痘は自然界ではすでに撲滅されており、薬はバイオテロなどの有事の出来事がない限りは必要なく、バイオテロ対策の備蓄用として購入されるとしても、天然痘に関してはそれほど売り上げにつながるものではありません。
シンバイオから見ると天然痘の権利は特別必要とする権利ではないでしょう。
<キメリックス社のFDA承認ニュースがシンバイオ製薬に与える影響とは>
天然痘に関しては、自然界に存在しないため、患者がおらず、ヒトを対象とした治験をすることができません。そのため動物を対象として試験を実施し、そのデータを使って申請をしています。
では、ヒトで投与したデータがないかというとそうではありません。
キメリックス社では、これまでにブリンシドフォビルの開発で実施してきた臨床試験の結果があります。1,000人を超えるデータがあります。
FDAは米国民の安全を守る機関ですので、それらのデータをもって、承認を下したということです。
つまり、FDAがヒトに投与する薬として認めた、ということが重要となります。
シンバイオ製薬は「化合物を薬にする」のではなく、「既存薬を適応拡大していく」のです。
シンバイオ製薬は上記の開発以外にも2021年にいろいろなイベントを控えた企業となります。
これからの動向に注目です。